小学生がカフェを運営! オーストラリアの体験型教育にみるビジネス直結の学習ストラテジー

小学生がカフェを運営! オーストラリアの体験型教育にみるビジネス直結の学習ストラテジー

オーストラリアの学校は多くの点で日本と異なっています。こちらの学校のユニークな点は州の教育要項に沿っていれば各学校の采配において独自な科目を設けることができること。

面白い取り組みをしている学校はたくさんあります。例えば私の職場の近くの小学校ではイマージョンプログラム(外国語で授業をする)を実施しています。そこは科目のほとんどを日本語で教えているんですよ!

日本で例えて言うならば、ごく普通の小学校で算数、理科、社会、図工を全て英語やフランス語で教えている感覚。日本なら「そんな事をしたら日本語の学習が遅れてしまう」とかの非難が轟々でしょうね。

さて、今回私が訪問したメルボルンの小学校、なんとカフェがあるんです!しかも小学生がその運営を任されていると聞いてビックリ!

果たしてどんなカフェなのか? どんなことをしているのか私自身、非常に興味がありました。そんなワケで今回は小学校カフェとその授業内容についてのお話です。

小学校の中にあるカフェ。その目的とは?

今、教育現場で注目を浴びている21世紀型教育。その項目のひとつである「実社会に結びついた学習」。これはどういうものかというと、学習する内容が実社会との繋がりを持ちコミュニケーションをもたらす学習内容を指します。

例えば、学校での絵画の授業。授業で絵を描いたとして、それを目にするは学校内の生徒や教師、そしてせいぜい親や保護者といったところでしょう。そこから更に一歩、開かれた場で幅広い人達に見てもらってフォードバックをもらう、そういったものが求められています。

この小学校で運営されているカフェはそういった教育ニーズに適ったもの。カフェは授業の一環として運営されていて、教師の指導のもとに生徒さん達はテキパキと動いていました。

では生徒さん達は一体どんな事を学んでいるのか? 詳しくみていきましょう。

ビジネスについて考える

カフェを運営する授業でカバーする内容の説明を受けた時、もの凄い衝撃を受けました。私はてっきり小学生の事だから、教師が作った授業内容に沿ってカフェでのそれぞれの役割をこなしていくだけだと思ってました。

ところがその範囲たるや、ほとんど生徒が考えて行動していると知ってまたビックリ。

まずは内装と音楽。カフェのテーマがシダの原生林で緑がそこら中に使われていました。

音楽はメルボルンのカフェにありがちな音量大きめのアップテンポな曲が流れ続ける、とったものからは程遠く、耳に入ってきたのは原生林の鳥や木々の風の効果音でした。

カフェは学校内の1ブロックをそれ専用にあしらえてありました。入り口をくぐると、かわいいウェイトレスさん(もちろん生徒さん)がテーブルまで案内してくれました。

メニューと料理、食品の衛生

ウェイトレスさんが持ってきてくれたメニューを見ると、4種類のスイーツが並んでいます。このセレクションは生徒さん達がグループで何を作りたいか決め、スイーツのレシピを調べて作るのだそうです。

それぞれのスイーツには担当した生徒さん達の名前が冠してあります。これって生徒さんのやる気と誇りを育みますよね。

値段も決めるのも生徒さん。ちゃんと原価を調べて利益が出るような値段設定にしてあり、利益が出たらそのお金でカフェのデコレーショングッズを買うんだそうです。

メニューまでも生徒さんの自作。ここまで来るともうただ感心してしまいます。

ミッション・ビジョン・ゴールの設定

ビジネスにはミッション(存在理由)、ビジョン(経営理念)、ゴール(目標)の設定が欠かせません。これらを明確化・言語化する事によってより的確な行動に結び付くからです。

このカフェのメニューには堂々とミッション・ステートメントが書かれていました。こういったビジネスの基本から学べるのってスゴイですよね。しかもビジネス用語を使うのではなく、もっと平たい言葉であってもそれらの概念について考える機会が設けられるのは素晴らしいと感じましたよ。

とっても大切な「お客様の声」

このカフェの入り口脇にのシダの木のモチーフが飾られていました。

でもこれ、ただのモチーフではなく、それぞれの葉っぱが「お客様からの声シート」なんです。

生徒さん達はシートを読んでカスタマーフィードバックの大切さを学ぶ事ができるんですね〜。そんじょそこらのカフェでさえ成し得ないことですよ、これは!

PDCAサイクルを循環させる

ビジネスでは基礎知識として存在するPDCAサイクル。事業活動における管理業務を円滑に進めるための手法で4段階あります。

  • P = Plan(計画を立てる)
  • D = Do (実行する)
  • C = Check (評価する)
  • A = Act (改善する)

この4段階を繰り返す事によって継続的な改善を続けてゆく訳ですが、生徒さん自身がどうしたらより良くしてゆけるのかという考える場が与えられるのかこのサイクルのツボですね。

とかく学校教育では「正解を求める」事に重きが置かれていますが、一歩でも実社会に出れば正解なんぞはむしろ無い場合が多いです。ならばこういった場で考える地頭を作っておく事が大事ですね。

将来のアルバイトや仕事に繋げる

生徒さん達がカフェで学ぶ事柄には段階があり、修了するとお免状がもらえます。

説明によれば、生徒さんが将来アルバイトをする際、雇い主にこの修了証を見せる事によって雇用をよりスムーズになるそうです。

そりゃそうですよね。一通りの事を理解している学生だったら雇い主も安心して雇えますもんね。

まとめ

今回、このカフェでお客さんとしてテーブルについてコーヒーとビスケットを頂きつつ、このカフェの運営方法や授業としての内容などを担当の先生に伺いしました。

途中、高級レストランやカフェの様に、「How is everything ?」とウェイトレスさんが様子をうかがいに来てくれましたよ。そんなところまで教育が行き届いているんだなぁ〜と感動ひとしお。

会計も生徒たちが本物のキャッシャーを使ってお金を扱います。本物のカフェで働き始めたとしても即戦力ですね。

日本では、こどもが様々な職業を疑似体験できる有名なテーマパークがありますが、こちらの小学校カフェと敢えて比べると教育として掘り下げる深さは段違い。しかもワンオフではなく経験や学習内容を積み上げ、それを改善して次のお客さんを迎え入れるという究極の授業。

こういった授業こそが子供の感性を刺激しつつ幅広いスキルを身につける事ができ、かつ生徒の自主性も引き出してくれる面白い取り組み。こういった授業があるのはオーストラリアの面白いところですね。

by カエレバ